2011年3月11日。東日本大震災。宮城県第二の都市、石巻市の死者・行方不明者は3,779人。ピーク時には5万758人が避難所生活を余儀なくされた。4月21日。避難所の1つとなった旧北上川に近い湊小学校を藤川佳三監督は訪れた。監督が、いちばん驚いたのは避難所の底抜けに明るい様子。でも何日か過ごしてわかったのは、笑顔の奥底にしまいこんだ悲しみの大きさだった。そして思った。ずっと一緒に過ごさないとわからないことがたくさんあるのではないだろうか。それから避難所が閉鎖される10月11日まで6ヶ月あまり。そこに泊まり込み、避難者に寄り添いながら、カメラを回した。それがこの映画だ。
「被災者は何を貰ってもありがとうって言わなければいけないの?」。使い古した衣類が積まれた支援物資を前に、そんな言葉に胸を突かれる。初めて聞く当たり前の本音。避難所生活の悲しさ、悔しさ。それでも平常時には交錯しなかった人たちの新しい出会いは、予期せぬ「生きる力」を生む。70歳目前の独り暮らしの愛ちゃん。仮設住宅に当選した愛ちゃんは、避難所を出て行く日、「嫁入りの気持ちです」と言った。同室の1人が歌う長持唄に「親類がいっぱいできた」と顔をくしゃくしゃにした。不謹慎かもしれないけれど、人って、こんなふうにつながりたいんじゃないだろうか。